ショパン/ エチュードOp.25-3, F-dur 右手の小指を響かせるには?

30年ぶりに趣味のピアノを再開して3年。年齢的に、指の機能を高める訓練は、今更やっても意味がないかな、と思っていたのですが、勇気を奮い起こして挑戦することにしました。3ヶ月ほどたったので、発見したことを書き綴っています。

今回は、ショパンエチュードの中でも、比較的地味なこの曲。一体、何のための練習なんだ?最初から最後まで、毎拍、同じパターンが繰り返される。しかも、あまり見たことのない音形で、練習するメリットが分からないまま、でも、まあ、楽しそうな曲だから、弾いてみよう、という軽いノリで始めました。

練習の意図がわからないので、本と首っぴき。ドゥヴァイヨン先生とコルトー先生の本を読みながら、練習を進めました。具体的には、次のとおり。まずは、右手です。

1. 拍頭の和音だけを続けて弾く(和音の幅と、移動の幅を覚える。)。

2.1、5、1、5、1、5の指だけ、取り出して練習する。短くはっきりと。拍頭にアクセント(重み)をつけて。

3.2と3の指の部分だけ、取り出して練習する。移動しながらも指だけで軽く弾けるように。

 

ある程度できるようになったら、曲として弾いてみる。上記の部分練習をしてから弾けば、そこそこ弾ける。でも、翌日、いきなり弾くと、間違いだらけ。そんなことをくり返して1週間。何の進歩も見られなかった。

そういえば、「なんか弾けない」としか思ってなかった。面倒だけど、間違えたところや、音が抜けたところを、すべて、記録しよう。

で、やってみたら、傾向は明らか。5の指の音がきちんと鳴らないというのが、最大の原因だった。

 

実は、右手の小指の動きが良くないのは、今に始まったことではない。

まず、形が良くない。関節が折れ曲がっている。子供の時に何度も突き指をしたせいだ。全体としては、薬指の側に大きく彎曲しているので、指の外側で打鍵することになる。このため、大きい音を出そうという時は特に、手首を小指側の傾けるだけの打鍵となりがちである。 

これまでも、こうした自覚はあって、何度か改良を試みたが、うまく行かなかった。こういう弾き方をしていると、右手の小指で音を響かせるのが、難しくなる。手の重みをかけて、指を使わず弾くしかないのだが、そうすると、手を開いたまま打鍵しないといけない時や、高速で他の指に移動しないといけない時に、対応しづらい。ピアノを弾いている時、内側にぎゅっと丸まるのも嫌だった。

 

鍵盤の上に、小指を置いてみる。鍵盤にまっすぐになるように。爪はまっすぐ天井を向くように。指は伸ばし気味で良い。左手と同じように。

どうして、右手は、左と同じフォームで弾けないのかな。

いつものフォームで弾いてみる。次に、正しいフォームで弾いてみる。いつものフォームでは、何かきつい音だったりするけど、正しいフォームなら、他の指と同じ音色で弾ける。

 

試しに、指を少しずつずらして、いろいろな角度にして弾いてみる。

すると、すると、なんと、ものすごく音が響くポイントがあったのだ!それは、指の角度というよりは、指の感触の違い。指のどこで鍵盤に触れているかの微妙な違い。指の中の骨にまで、そのまま力が伝わる箇所。ここに触れれば、とても綺麗に音が出る。少しでも外れると、音は乱れる。

そういえば、「タッチとは指の感触だ」とか、「指先を感じて」とか、言われているのは、こういうことか。

この感触さえ覚えれば、自分の指の形がどうなっているのか、気にしながら弾く必要はない。

音がうまく出ないのは、鍵盤を押す場所がずれているせいかと思っていたが、そうではなくて、指の当たっている箇所の方が、ベストの場所じゃなかったんだ。

こんなことで感動している私は、これまで何やってたんだ?きっと子供でも知っていることなんだろうけど、指をいろいろな角度にして弾いてみた時の音色や音量の違いは感動的だった。

この新しいフォームで弾くと、変わるのは、小指だけではなかった。人差し指が親指の近く(上方)に来る。

この手の形は、ミトンのようだ!そういえば、ロシア奏法の先生がセミナーで勧めていらしたな。その時には、どうして、ミトンの形がいいのか、わからなかったが、全ての指が鍵盤にまっすぐに伸びるので、粒が揃うのだな。音もマイルドな響きになって美しい!

これまでの私は、小指に限らず全ての指が、鍵盤に対して少し右側に倒れていたので、右斜めから打鍵していた。この角度から打鍵すると、とても鋭い嫌な音になる。右手だからと思って、頑張って弾いていたので、気づかなかったのかも。

 

手首を少し内側に入れることになるので、必然的に、腕全体も、内側にねじり気味、または肘を外側に張り出し気味となる。

実は、私、これまで、「肘がキュッとなっている」と、言われていた。肩懲りもあった。

それから親指も、指の腹に近い場所で打鍵することになるので、第1関節を使いがちとなり、腱鞘炎で苦労した。

 

「ミトンの手」にして、小指の骨のところでタッチするようにすれば、こうした長年の懸案が全て解決するかも!

遠くの鍵盤に飛んで打鍵しないといけない時も、小指だけを伸ばせばいいので、手をあまり動かす必要がなくなり、手のひらも安定する。つまり、ミスも減るし、疲れにくくなるはず!

 

もう一つ思い出した。右手の動きは、いつも、バタバタしているように見えていた。すごく動かしている感じ。でも、それは良くない。打鍵と関係ないの指も動いているということだから。こんなに動かさなくてもいいはずなのに、と思っていた。

なぜかわからないが、ミトンの手にしたら、この「バタバタ感」もなくなった。指も伸ばし気味なので、第3関節もしっかり出てきたと思う。

 

ただ、小指を弾く前に、中指が上にパンと上がる癖は残ってしまう。原因がわからない。中指が鍵盤についたままで弾いてみることにする。どうも、手を開こうとすることによって、中指が上がるようだ。手を開いても中指が上がらないようにするには、、、2から4の指あたりの水かきも広げるように力を入れればいいようだ。しかし、そんなんことをする必要があるのだろうか?

3の指を鍵盤に残して弾こうと意識する。でも、3の指を鍵盤にそのまま残すと、次の音が弾きにくい。力を抜くだけにして、場所は動かしてもいいことにする。

これで、3の指がピクピク上がるのは、止めることができた。

動画で見ても、手の動きは最小限の感じで、柔らかい。これでいいのかも。

 

それにしても、3ヶ月かかって、ようやく8小節。しかも、右手だけ、とは、文字通り「亀の歩み」だ。でも、この曲でとても大事なことに気づけた。延々と同じ動きが繰り返されるけど、5の指だけは色々とタッチを変えることが指定されている。この曲は、5の指の練習なんだね。

もっと言うと、この曲は、幻想即興曲やコンチェルト1番の1楽章の中間部などを弾くのに役に立ちそう。1−3−5ー2とか、1−5−2ー3とかの指使いで、速いパッセージの繰り返しって、ショパンで良く出てくる。その時に、5が抜けたり、2と3が曖昧になったりしないための練習曲なのではないか。

 

小指のストレッチをすることにした。ストレッチについては、また今度書こうと思う。